大阪高等裁判所 昭和35年(く)75号 決定 1960年10月05日
少年 Y子(昭一八・一二・一八生)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の要旨は、少年が保護観察決定を受けて帰宅した当日夜一一時頃まで外出したのは祇園祭の見物に行つたのであり、又その翌日家を一晩あけたのは知合の男が住込の働き口があるといつたので母親にその旨告げ服も借受けて行つたものであり又申立人が姙娠していたのはそのとおりであるが、手術も終つたから、右程度の行為により少年を医療少年院に送致した原決定は著しく不当であるから、その取消を求めるというのであるが、記録を調べると、少年が後記保護観察決定を受けて自宅に帰つた当夜午後一一時頃まで外出したとは原決定理由においては何等認めているところではない。しかし少年は昭和三五年七月一六日京都家庭裁判所において窃盗、詐欺の非行により保護観察処分の決定を受けて帰宅したものであるが、その翌日である同月一七日朝早くも不良交友のたまり場である卓球場に行つたほか、同夜は男と無断外泊したことが認められ、右外泊が就職のため母親に告げてしたものであることはこれを認むるに足る何等の資料もなく、同月一九日午前零時頃には、ひそかに母姉の衣類を持出しに帰宅し、家人に発見制止されるやこれを振切つて飛出して再び外泊したこと、又不良交友との関係により姙娠状態にあつたことも認められる。かくの如く右保護観察決定があつたにかかわらず、故なく家庭によりつかず、保護者の正当な監督に服さない性癖があるばかりか、その家庭環境が悪く、母姉の説得力は無力である状況であり、他方少年は精神薄弱で社会への適応力が弱く、自己中心的で、倫理観念が未発達で不良異性と外泊する等徳性を害する行為をする性癖が認められるので、これらの事情を綜合すると少年の心神に著しい故障があり、将来犯罪を犯す虞まことに顕著なものがあることが認められる。よつて少年を医療少年院に送致した原決定はまことに適切であつて、その後少年が姙娠中絶処置を終了したにしてもこの一事をもつて右送致決定を左右するに足るものとは認められないから本件抗告は理由がないというの外なく、よつて少年法第三三条第一項により主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 松村寿伝夫 裁判官 小川武夫 裁判官 柳田俊雄)